「チャル」にインタビュー *2020年5月ビデオ通話にて収録

チャル:なにしゃべんの?


:なにしゃべるかな。


チャル:もう劇やんないの?


:やるやる。今年の12月に埼玉の劇場で。前のダルクの公演見てくれて「凄く良かったから、是非うちでやって下さい」って言ってくれて。


チャル:埼玉いくの?いいねえ。


:東京から30分くらいなんやけど、すごい立派な劇場で。あの作品をやるんやけど、もう(ダルクに)おらん人もいるからね。


チャル:そうだね。


:うん、だから、今いるメンバーで作るし、チャルさんいるなら出てもらいたい。だからよろしく。


チャル:こちらこそよろしく。いい劇にしようよ。


:チャルさんがダルクに来たんはいつやったっけ?


チャル:(2019年)3月23日にダルクにきたの。出所するときダルクの人が迎えに来てくれたの。その足でダルクに来たわけよ。

 

:そっからってことかな。

 

チャル:そう。そっから。


:最後は何年やったっけ、刑務所。


チャル:最後は、3年。2年11ヶ月と10日、ほぼ3年。満期。


:そのつとめを終えて、ダルク来たと。


チャル:ダルクの人が俺を迎えに来てくれたの。車でね。荷物あるから。

 

:そんでダルクに来たら私がいてさ、突然舞台出ることになったやん?考えてみたらすごいよね。


チャル:そうそう。


:どういう感じだった?目まぐるしいやん?


チャル:普通の人間は薬物依存のこと理解できないと思うんだ。俺は薬物やって、やめようと思う気持ちがあるから、薬物依存を治す施設に来たわけよ。薬物やってた人が薬物をやめるにはどうしたらいいかと、みんなでディスカッションして、こういう考え方もあるのか、って学んでるわけよ。ミーティングを通してね。 俺は薬物をなんでやめられたかというと、俺はいろんな嫌な目にあったのよ。それでもう頭が疲れちゃって。出来上がっちゃって。「出来上がっちゃう」って言葉、分かんないかもだけど、薬をやりすぎて頭がおかしくなることを「出来上がっちゃう」って言うんだよ。そういうことを、俺は二度と繰り返したくないの。 散々やって、出来上がっちゃって、パーになる手前までいっちゃったのよ。パーになってたかもしんない。

©Naoyuki Hirasawa
©Naoyuki Hirasawa

:たまたまダルク来て、やり直してさ、今までとは全然違うことしてるやん。


チャル:そうそう。畑したり。今までそういう経験ないから毎日が新鮮なわけよ。集団でなんでもやれる。畑行ったり、みんなでご飯つくったり。そういうことが今までなかったから毎日が楽しいわけよ。料理は経験があるから自分でできるし、それは助かってる。ミーティングを通してみんなに薬物とかいろんな経験の話を聞いたり。中にはタメにならない話もあるよ。でも、俺にとって凄くタメになる話をする人もいるわけよ。なかなかいいこといってんなーって。ダルクのスタッフのみんなもね、一生懸命俺なんかの手助けしてくれるから。ヨイショするわけじゃないけど、ちゃんとしなきゃいけないから。おれ酒好きで、2回くらい飲んじゃったけどね。もうみんな知ってるよ(笑)


:失敗はするよ。でも、薬やめたい気持ちを持ってたら、ね。

 

チャル:そうそう。まずそれ。ミーティングで、薬の欲求がある、とか皆言うんだけど、俺は薬の欲求ないから。俺はやめるから。何故なら、もうあんな思いをしたくないわけよ。


:薬しなくても楽しいことあるやん。


チャル:あるある、いっぱいあるよ。ただ、人それぞれ違うけど、薬やってるとシャキっとしてね、なんでも夢中になれるわけよ。経験しないとわからないよ薬は。 やってない人間に口で説明しろって言われても出来ない。体に入れなきゃ分かんない。1回ならやめるかもだけど、脳がおぼえちゃってるから、だから、なかなかやめらんないんだよ。


:でも、今やめてるやん?


チャル:やめてるよ。やりたくないもん。シャブのことなんか考えないし。他の人は知らないよ。前はね、ここに来るずっと前は、刑務所入っててもね、どこに行けばいい品物(薬)があるとか、どこいけば安いよとか、みんなそれしか頭ないから、そういう話しかしないわけよ。おれは神戸(の刑務所)に入ってるとき、もうシャブやめよう、って自分に誓ったから。


:いいやん。


チャル:やめたんだけど、友達はやっちゃうわけ。そいつんとこ泊まったら、やってるわけよ、もう。でも俺はやらなかったから。俺はやらなかった。


:えらい。

チャル:そいつんとこ行って、一回だけ虫がわいちゃってさ、一回だけやったわけ。一回だけだけどね。いろいろ対人関係であって嫌になっちゃって、京都に来て、事件起こしちゃって、京都刑務所に住むようになったわけ。京都出てきてからは一回もやってない。


:そんでここにいるんやな。


チャル:そうそうそうそう。

 

:色々チャルさんの話し聞いてきたけど、いろんなことがあって、こうやって出会えて、一緒に舞台やって、良かったと思ってる。


チャル:俺も良かったと思う。前向きに、真剣にやってたから。


:舞台が何のためになるんかは、実際はわからんへんねん。回復のためになる、とかではないと私は思ってんねんけど。何かを集中してやるとか、緊張するとか、そういうことで、私もそれで何とか生きてるんかもしれへんなと。


チャル:一つのことに向かって一生懸命やるのはいいことだよ。イヤイヤやるんじゃないんだから、気持ちも入ってるわけよ。翠ちゃんと出会えたからさ。舞台って経験したことないから、新鮮なわけよ。俺にとってはね。

©Kai Maetani
©Kai Maetani

:うん。舞台に出てもらってさ、チャルさん素晴らしい役者さんやと思った。12月の埼玉の舞台、私はチャルさんに出て欲しいって思ってるけど、出てもらうにしても出ないにしても、観に来てくれるお客さんに、メッセージがあれば。


チャル:依存症を回復した人間として?

:なんでもいいよ。舞台に出る人として、でもいいよ。


チャル:うん、じゃあ、舞台に出る人として。舞台はどんな内容でやんの?


:前と似たよーな感じやけど。


チャル:自分はね、薬の依存症で悩んでたけど、ダルクに繋がって、劇をやったことが、ほんとに良かったなと。きっかけがないと人間やめられないんだよ。 集団として一緒に一生懸命何かをすることが今までなかったから。だから俺はすごく良かったと思うんだよね。(依存症のことが)全然分かんない人たちに対してさ、俺たちは依存症になったけど、今は回復して、社会人としてがんばってることさ、アピールしたいよな。なんでもね、経験しないとものは語れないわけよ。物事っていうのは。だから...観ないとわかんないんだよ。


:私もそう思う。舞台って、生で観にきてもらわな、わからへんから。


チャル:そう、生で観にきた人がどう見るのかっていうさ。俺さ、最近ね、「帰っちゃうよ」っていうのが口癖なのよ。俺もう嫌だから帰るよ、ここ出ていくよ、っていうのが。まあ、出て行かないけど。


:ネタになってんのね(笑)


チャル:そう。1日1日がマンネリ化してるから、そういう時期なんだよ。同じことばっかりやるから、刺激ってのがないんだよな。前住んでた住之江へ帰っちゃおうかなーなんて、冗談でね。帰ってもだれもいないけどね。俺は2年3年がんばるけどね。


:舞台もね。


チャル:そう。帰っちゃったら舞台出来ないからね。


:12月までは、ね。


チャル:12月までじゃないよ。


:そっか。


チャル:ここでずっと頑張るよ。頑張る。自分でさ。


:うん、頑張ってください。私もはやくダルク行けたらいいねんけどなあ。


チャル:だめなの?早くおいでよ。


:あかんねんて。行きたいよ。私。ヒマしてるんやから。仕事もなくなったし。


チャル:ヒマなの?延期?


:中止。だから毎日でもダルク行けるねん。でも、行って、チャルさんにコロナでもうつして、コロっといってしまったらアカンから、我慢しとくわ。


チャル:はい。わかりました(笑)

京都芸術センターでの稽古の様子。
京都芸術センターでの稽古の様子。