「タケ」(京都ダルクスタッフ)にインタビュー *2020年5月ビデオ通話にて収録。

:黒いマスク、ガラ悪いな(笑)


タケ:もう、色とか、言うてられへんからな(笑)


:タケさんてほら、出会った頃、子どもが出来た時期やったやん。


タケ:そうですね。


:「依存症を隠さずに生きたい」って言ってたやん。今もそうやと思うんやけど。


タケ:うん。


:私もそれが良いやろと、ベストやろと。(薬を)やめ続けていて。それを子どもに話すときがくるんかなって。


タケ:あると思いますよ。まちがいなく。


:それって、どんな感じになるんやろ。


タケ: まあ、シンプルに「薬、使ったことあるよ」って。子どもが物心ついたころに、この仕事してるかわからんけど。聞いてくるかなって。今も刺青触ったり引っ張ったりしてくるし。いつか聞いて来た時に、答えられるようにしようって思う。知っといていいかなって。僕の父親ヤクザやったんですけど、僕は物心がつくまで気づかんくて。家には帰ってこーへんし、母は何も言わへんし。僕、知らんくて。中2か中3くらいで、初めて父が何やってるか聞いたんですよ。父親参観にも母が来るから、友達にも聞かれるんですよ。寂しさとか不安とかがあった。だから、自分の仕事とか、何をやってるかとか、子供には話せたらいいなと。

©Naoyuki Hirasawa
©Naoyuki Hirasawa

:ダルクで働いてるって子供に伝えることがさ、普通に「うちの親は先生」とか、「うちは警察官」とか、それと同じレベルで話せる世の中にならなあかんねん。


タケ:そうですね。時間がかかると思いますが。


:私くらいの年齢の世代から、そういう世の中に変えられるんちゃうかって思うねん。子どもの悪口とかいじめとか、親に刷り込まれてる場合があると思ってて。あれはあかん、これはあかん、みたいな。そこから変わればいいなって思う。


タケ:ですよね。海外の先進国は変わってきたでしょう、治療して治った人はみんな拍手で温かく迎えられる。何年か前までは日本と同じで、罰を与えなあかんかった。僕らの世代は難しいかも知れへんけど、その足がかりは作って行かなあかん。世の中の人に訴えるっていうより、僕がこうして隠さず生きていくのが必要やと思う。同じ考えの人も違う人もいる。言いたくないし隠したい、家族のためには言うべきじゃない、っていう人もいる。うちの奥さんも反対ですよ、多分。僕のことを身内に言うとか、テレビに出るとかは、出来たらやめてほしい、って言われますよ。そのために話はします。「こういう仕事していくっていうのは、顔を晒して伝える立場にあるってことや」と奥さんには言うてます。依存症施設で働いてることも、親兄弟は知ってるけど、親戚は知らないんですよ。もしそれを知った時は僕が説明する、って言うてますけど、不安でしょうね、奥さんは。僕の考えで押し通すのは難しいですけど、僕はこういう風に伝えていくし、恥ずかしいこととは思ってない。カッコ悪いことじゃない。元依存症でも一生懸命生きてる人や、今日から(薬を)やめようっていう人すべてが、みんな素晴らしいと思う。

スタッフルームにて。左:施設長のカズさん、右:タケさん
スタッフルームにて。左:施設長のカズさん、右:タケさん

:やめようとしてるんだからね。


タケ:そう。まあ、現在使用中の人はまだ時間かかるのかなって、今はその気持ちになれなくても、いつかなれたらなって、でもここに来る人は自分の時間を割いて来てるから、共感できる。世の中はまだ、そうならんかもですがね、それはもう仕方ないかなと。

:うん。 最近タケさん若い頃の写真よくアップしてるやん。めっちゃ悪かったんやろなっていう顔してるやんな(笑)


タケ:やんちゃくれっていうか、僕らの時代はそういう人多かったんですよ。

板前だったタケさん。パリの京料理屋さんで働いていた20歳頃の写真。
板前だったタケさん。パリの京料理屋さんで働いていた20歳頃の写真。

:多かった。


タケ:ヤンキーが薬使って人生どうにもならんくなるストーリーがあったんですけど、今は違うんで。


: 今も、昔と比べて人間がめちゃ変わったわけじゃないよね。 悪い人には見えへんていうか(笑) いろんなことがあって、今に至るんやろうと思う。なんか、私は、タケさんの昔の写真見て、ある一人の人が、あるところから今に至ることが、すごい尊いことやな、ってったら変なんやけど、面白いなって思う。


タケ:あれは、例えていうなら、僕が鎧(よろい)をつけていた時ですよ。たくさん鎧をつけていって、時間が経って、その鎧を脱いでもいいやんって思ったから今の自分があって。いつでもその鎧はつけられると思うんです。それほど世の中に絶望してたし、どう生きたら良いかわからんかった。出来ることは鎧をつけて自分を守ることで、その守り方が、人とは違って薬使ったり、人に迷惑をかけることだった。それが今は必要なくなって。でも、また鎧をつけることは簡単なんで、戻らないように努力しますけどね。


:タイチくんともそういうことを喋ってたんやけど、たくさんの人が鎧つけたまま死んでいくと思うねん。ダルクのみんなは薬でつまづいたことのおかげで、脱ぐチャンスがあった。鎧っていろんな意味があるけど。


タケ:うん。ダルクに来る人はだいたい、外側のせいに、人のせいにしてくる人が多いけど、フタを開けたら、自分の問題やと気づく。そこに気がつかんと、鎧は脱がれへんので。そうしないと、鎧をつけて戦うっていう方法しかなくなるでしょう。


:なるほどね。 最後に、埼玉の公演に来てくださるお客さまに、メッセージを。


タケ:改めて言うのは恥ずかしいんですけど、すごくいい劇やったんで、それが再演って聞いて僕も、いいなあって思ってるんで。ぜひ観に来てほしい思います。



【再演】

akakilike『眠るのがもったいないくらいに楽しいことをたくさん持って、夏の海がキラキラ輝くように、

緑の庭に光あふれるように、永遠に続く気が狂いそうな晴天のように』

日程|2020年12月 上演予定

会場|富士見市民文化会館 キラリ☆ふじみ(埼玉)