「カズ」(京都ダルク 施設長)にインタビュー *2020年5月ビデオ通話にて収録

:ダルクは今度、新しい施設が立つわけですが、その後どうですか?


カズ:はい、順調に進んでます。

:そのことも踏まえて、今カズさんが伝えたいことがあれば、お願いします。


カズ:ダルクの施設長として平穏に生活してて気持ちが動いたのが、グループホームの建設を地域に反対されたことです。やる前は甘く見ていて。うちの運営委員の人にも言われたんが「これが現実」だと。今までは温かく応援してくれる人たちのところでやってきて、ここの地域とも10年やってきたし、京都では理解してもらえる、と思ってたんやけど。(反対運動で)こういう露骨なことを言われたことがなかったんで、ショックでしたね。怖い、と思った。


:うん。私も反対運動の集会に行ったときに住民の人たちを怖いって感じてしまった。

©Naoyuki Hirasawa
©Naoyuki Hirasawa

カズ:僕たちは、北は北海道から南は沖縄までダルクの仲間がいてるので、自分たちがマイノリティって思ったことがなかったんですけど、京都の中で少数派に置かれた気がした。(反対派の人々が抱いている)偏見や誤解について説明するんですけど、こちらの話は一向に入っていかなくて。「そういう風」に見えてるんやろうなって。差別主義者とかじゃなく、普通に暮らしてる多くの人々の見方が、一般的なのかもしれへんな、って考えるようになった。「僕たちはあなたたちが言うような人間じゃないんです」と理解してもらいたい。他の地域の人には「怖い」なんて言われたことないし、みんな仲良くしてもらってるから、触れ合ってくれたら理解してもらえると思っていたけど、分かってもらえなくて。


:うんうん。

 

カズ: 一方で、普段関わりを持ってくれる人たちは、温かい気持ちで付き合ってくれるのが分かる。じゃあどないして、自分たちは(反対派の人々に)理解してもらえるんか、理解してもらわなあかんのか?と問い続けています。ダルクを卒業して(依存症のことを)隠して暮らしていくのもありですけど、この社会にはスティグマ(負の烙印)があるんで。知られても、受け入れてもらえたら回復していけるから、社会の理解があるほうがいい。(反対派の)住民の人が耳をふさぐ前に関わることができれば、今ボランティアなどに行かせて頂いてる地域のように仲良くやれるんですが。でも、こっからやらんとしゃあないんで。実際の依存症の人間は、パッと見はガラが悪いけど、優しいとこもあるんやなとか、実際のところを見て欲しいなと。


:うん。見ないと何も分からないもんね。

©Naoyuki Hirasawa
©Naoyuki Hirasawa

カズ:倉田さんの舞台では、自分たちを外から見る感じがあった。僕は僕、お客さんはお客さんの見方があるんでしょうけど。見てくれるんやったら、「依存症の人間てどんなんやろな」とか、そういうのを見てくれたらなと思います。

 

: 舞台公演が終わってからも、舞台の盛況とは全然別の事実として反対運動があるやん。京都公演では、300人くらいのお客さんがあったかい拍手をくれたやん。観に来てくれた舞台関係の仲間が、よっちゃんとかチャルさんの名前を覚えてくれたりした。そのこととは関係なく、反対運動があって。反対運動のキツさは、私も何度か行って、ある程度は理解してるつもりやけど。でも、舞台をやることで、ダルクの問題解決のために「何かがしたい」と思ってるんじゃないねん。ダルクのみんなが舞台に立ってることは 「イケてる」と思う。でもやっぱり、この作品を発表して何になるんやろ、とも思った。でも、みんなの実際のところを観る機会がないと、イメージでしかないから。薬物の人のイメージって、一般的には、やっぱ最悪やから。人って、関わらんかったら知らんから。目撃しないとわからんから。その「出会い方」の一つにこの舞台がなればいいなって。知ってもらえたらいいなって。生きてることを。

京都から手伝いに来てくれた俳優の諸江さんと趣味の自転車話に花が咲く。
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